業務災害、通勤災害で死亡した際の労災保険 遺族補償年金等の給付見直しのポイント
労働者の業務上や通勤途上での死亡事故を対象とした労働者災害補償保険(労災保険)において、保険給付の一つである遺族給付が男女格差の解消を目的に改正されました。
2027年4月1日の施行に備えて、改正のポイントをまとめます。
夫の遺族給付支給要件の改正
「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」が、2026年7月10日に参議院本会議で可決・成立し、7月17日に公布されました。
今回の改正で注目すべき内容の一つに遺族補償年金等の見直しがあります。
現行の労災保険制度には、業務災害または通勤災害において労働者が死亡した場合に、その労働者の遺族の生活を保障するための遺族給付として、業務災害については遺族補償年金、通勤災害については遺族年金が支給されます。
支給対象となる遺族の範囲には、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」などが含まれますが、配偶者については、夫と妻で受給要件に違いがあります。
具体的には、妻が働いていて業務災害や通勤災害で死亡した場合に、夫が遺族補償年金または遺族年金の受給資格者となるためには、原則として「60歳以上」であること、または厚生労働省令で定める障害の状態にあることが必要とされています。
一方、妻については、このような年齢要件や障害要件は設けられていませんでした。
しかし、近年は女性の労働参加が進み、昔のような夫が働き妻は専業主婦というかたちよりも、共働きが一般的になるなど、就業構造や家族のあり方が変化しています。
こうした状況を踏まえ、今回の改正では従来の「夫」と「妻」で異なっていた支給要件が見直され、夫が遺族となった場合の年齢要件及び障害要件を削除して男女間の取扱いを均衡させることとしました。
給付額の改正
給付額についても見直しが行われています。
現行制度では、遺族が妻1人で一定の要件を満たす場合は、通常の給付額に加えて「特別加算」(給付基礎日額の22日分)が行われます。
これは、高齢または一定の障害状態にある妻に対して特別な加算を行う制度ですが、改正により廃止され、単に支給対象となる遺族の人数に応じて給付されることとなりました。
遺族が1人の場合の遺族補償年金または遺族年金は、原則として「給付基礎日額の175日分」です。
その他の改正
他には「保険給付の請求権等の消滅時効」の期間の改正があります。
労災保険の保険給付の請求権は、保険給付ごとに請求期限(時効)が定められており、障害補償給付、遺族補償給付等については5年間、療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護保障給付等については2年間で時効により消滅します。
しかし、改正により時効期間の原則は維持しつつも、その疾病の性質上、災害保障の事由に該当するかどうかなどを容易に判断できない疾病として政令で定めるものについては、療養補償給付等の請求権をこれまでの「2年」から「5年」に延長することとしました。
容易に判断できない疾病としてどのようなものが該当するかは今後政令で定められます。
たとえば、発症から「労災かもしれない」という認識に至るまでに時間がかかる精神障害、長期間の過重労働との因果関係が後から判明する脳・心臓疾患、潜伏期間が長い職業性疾病・化学物質による健康障害などです。
こうした疾病では、気づいたときにはすでに2年が経過していたという事態が起こり得ましたが、時効を5年とすることで救済の間口が広がります。










