10月1日施行に備えて再点検と対応が急務 同一労働同一賃金改革のポイント
厚生労働省は4月に、パートタイム・有期雇用労働法施行規則および雇用管理指針の改正とともに、改正同一労働同一賃金ガイドラインを公布しました。
10月1日からの適用に備えて、改正前の同一労働同一賃金の課題を踏まえながら、中小企業が今すぐ見直すべき事項を確認します。
同一労働同一賃金とは
「同一労働同一賃金」とは、同一企業・団体において、無期雇用フルタイム労働者である正規雇用労働者と、有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者である非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を図る取り組みです。
この取り組みを通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、「働く時間」「働く場所」「業務内容」について、一人ひとりのニーズに応じた柔軟な選択を認める働き方が可能な職場の実現を目指しています。
同一労働同一賃金の原則となる考え方や具体例は、「同一労働同一賃金ガイドライン(以下、ガイドライン)」に示されています。
2021年4月1日にはパートタイム・有期雇用労働法において全面施行、その前年改正の労働者派遣法においても施工され、不合理な待遇差の禁止が規定されるとともに、待遇に関する説明義務の強化などが図られてきました。
同一労働同一賃金の現状
働き方改革関連法の施行後5年を目途とする見直しを前に、2025年12月、労働政策審議会は、「雇用形態又は就業形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた取組の強化について」の中で「正社員の賃金を100とした場合、正社員以外の賃金は66.9となっており、非正規雇用労働者の待遇改善は着実にすすめられているが、依然として賃金格差がある」と報告しています。
また同一労働同一賃金の施行後において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差に関する最高裁判決が複数示されていることから、さらなる待遇改善に向けた省令などの見直しを求めました。
こうした状況を受けて2026年4月に改正ガイドラインが交付され、10月1日より施行されます。
今回の改正では、近年の裁判例を踏まえて、不合理な待遇差についてより具体的に明文化し、雇用形態や就業形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた取り組みの強化を図る方針です。
主な改正事項1
パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、パートタイム・有期雇用労働者を雇入れる時の労働条件については、従来の明示事項である「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」に加え、新たに「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の明示が必要となりました。
待遇の相違等については、改正ガイドラインにより、「退職手当」「無事故手当」「家族手当」「住宅手当」「夏季冬季休暇」「褒賞」に関する判断基準が新たに追加され、「賞与」「福利厚生施設」「病気休暇・休職」については、より詳細に明記されています。
また、事業主は、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に待遇差がある場合、パートタイム・有期雇用労働者からの求めがあれば、待遇の相違内容とその理由や対応にあたって考慮した事項を説明する義務があります。
説明については、「資料を活用して口頭による方法」、または「説明すべき事項をすべて記載したわかりやすい内容の資料を交付するなどの方法」による必要があります。
口頭による場合には、関連資料を交付することが望ましいとされています。
待遇についての納得性の向上は紛争の防止にも資することから、求めがない場合においても、労働契約の更新時などに待遇差の内容・理由に関する資料の交付や説明を求めることができる旨を周知することが推奨されています。
主な改正事項2
改正ガイドラインでは、待遇の相違に関する考え方として、「待遇差に不合理と認められるか否かは、それぞれの待遇の性質・目的に照らして判断されるものである」としています。
具体的な留意事項については、待遇の相違要因として、正社員人材の確保や定着などを目的とするいわゆる「正社員人材確保論」や、定年後継続雇用において有期雇用労働者であるだけで待遇差を設けることは、直ちに不合理ではないと認められないと明記されています。
不合理な待遇差を解消する際には、正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善を図ることが明記されているため、留意しましょう。
また不合理な待遇差の禁止に関しては、待遇差を設けるにあたって考慮すべき事項である「その他の事情」について、「職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行」などが具体的に挙げられています。
さらに事業主が一方的に待遇を決定した場合においては、当該待遇の相違が不合理と認められる事情となることが明記されているので注意が必要です。
無期雇用フルタイム労働者については、パートタイム・有期雇用労働者に該当しませんが、労働契約の締結・変更する際の均衡の考慮にあたっては、ガイドラインの趣旨が考慮されるべき旨が明示されています。
改正に伴う実務対応
企業においては、再度自社の現状を把握するために、雇用形態に応じた社員区分の確認に加えて、賃金、賞与、手当、休暇、福利厚生などの待遇項目を一覧表にして項目ごとにルールを整理しなければなりません。
その際は、就業規則などや労働条件通知書だけでなく実態に基づいて確認することが必要です。
その上で勤務形態や待遇について比較し、待遇差があればその理由を明文化して、社員区分ごとの差を説明できるようにすることが重要です。
特に人事考課制度については、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を昇給に反映させるなど、公正な評価にに基づき賃金が決定されているか確認する必要があります。
賞与や退職手当には、労務の対価の後払い的な要素や功労報償的な要素など様々な目的が含まれています。
自社の賞与や退職手当の目的を改めて確認し、それがパートタイム・有期雇用労働者にも当てはまる場合には、支給要件が正社員との職務内容などの違いに応じて均衡がとれているか精査しましょう。
またパートタイム・有期雇用労働者について、正社員と同一の業務内容である場合や転居を伴う配置変更がある場合、労働契約更新を繰り返しているなど継続的な勤務が見込まれる場合には、自社の各種手当や福利厚生が適切に支給・付与されているかを確認することが重要です。
職業能力開発促進法においては、パートタイム・有期雇用労働者にも適用あることを確認した上で、職業訓練などに関する制度の構築に努める必要があります。
以上により職業規則などの作成または変更が必要な場合は、雇用するパートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めなければなりません。
過半数代表者としての行為に対して、解雇など不利益な取り扱いは禁止されているので留意してください。
事業主には、処遇改善に関する自社の取組状況、正社員転換制度の内容や転換実績、資格取得のための教育訓練等の情報について、当該労働者に明示するように努めるとともに、ウェブサイトへの掲載などにより定期的に公表することが求められています。









