50人未満の小規模事業場も義務化 ストレスチェックへの対応のポイント
労働安全衛生法の一部改正により、ストレスチェックの実施義務が常時50人未満の労働者を雇用している事業場にも拡大されることになりました。
施行日までには猶予がありますが、該当する事業場はどのような体制整備をすべきか検討しておきましょう。
労働安全衛生法の一部改正が2025年5月14日に公布され、当分の間、努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場に対しても、年1回の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック制度)の実施が義務化されることとなりました。
ただし、施行は「公布後3年以内の政令で定める日」とされ、猶予期間が設けられています。
とはいえ、施行が早まることも予想されるため、常時50人未満の労働者を使用する企業や50人未満の支社・工場等の拠点を有する企業は、ストレスチェック実施体制の整備などを早めに検討しておく必要があります。
メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合
2025年8月7日、厚生労働省が公表した「令和6年労働安全衛生調査」で、事業所が取り組んでいるメンタルヘルス対策の内容(複数回答)について見ると、「ストレスチェックの実施」と回答した事業所が65.3%(前年は65.0%)で最多でした。
これを事業所の規模別で見ると、労働者1000人以上の事業所では100%(同99.9%)、労働者50人以上の事業所では89.8%(89.6%)を占める一方、労働者30~49人の事業所では57.8%(同58.1%)、労働者10~29人の事業所で58.1%(同58.6%)となっています。
今後、労働者50人未満の事業所においてもストレスチェックの対応が求められることになれば、結果としてメンタルヘルス対策に取り組む事業所も増えることが見込まれます。
小規模事業場のストレスチェック実施方法
小規模事業場の実情を考慮したストレスチェックの実施方法については現在検討中ですが、労働者50人未満の事業場では、産業医の選任義務がなく産業医不在の事業場が多いことや労働者のプライバシーの保護などが課題となります。
ストレスチェックを実施する場合、自社で行う方法と外部に委託する方法があります。
労働者50人未満の小規模事業場では、従業員のプライバシー保護の観点から、外部委託が推奨されています。
厚生労働省では「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」を公表しており、外部委託する場合の注意点として、実施体制について1.受託業務全体を管理するための体制が整備されているか、2.受託業務を適切に実施できる人数等の特定の資格者等が確保され、かつ明示されているか、3.実施者やその他の実施事務従事者が、必要に応じて委託元の産業保健スタッフと綿密に連絡調整を行う体制が取られているか、などを確認することをあげています。
実施体制の整備
外部委託する場合でも実施の責任は事業者にありますので、ストレスチェックの担当者や実施方法などの体制整備は社内で行われなければならず、1.実施時期、2.使用する調査票の準備、3.高ストレスの判定基準、4.面接指導の申出先や依頼などについて決めておく必要があります。
特に、ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合、速やかに医師による面接指導を行えるよう体制整備が必要です。
とはいえ、労働者50人未満の企業に産業医の選任義務はないため、単発で産業医に訪問してもらうスポット契約ができる機関を選定しておくことも必要です。
面接指導を行う医師は、地域産業保健センターや産業医紹介サービス、地域の医師会などで紹介してもらうこともできます。
ストレスチェック実施後は、所轄の労働基準監督署への報告義務があり、それを怠った場合、罰則が科せられることになりますが、労働者50人未満の事業場については、負担軽減の観点から労働基準監督署への報告義務は課されない方針です。









