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社会保険の加入対象の拡大などを実施 年金制度の一部改正のポイント

投稿日:2025年9月24日(水)

2025年5月16日、第217回通常国会に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が提出され、衆議院による修正を経て、6月13日に成立しました。
ここでは、特に企業に対して影響が大きいとされる3つの改正点を確認します。

年金制度改正の趣旨と概要

今回の年金制度改正は、社会経済の変化に対応し、働き方やライフスタイルなどの多様化を踏まえた制度の構築により、機能強化を図ることを目的としています。
また、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充などを通じて、高齢期における生活安定のための措置が講じられています。
改正項目において、特に企業に対し影響が大きいと考えられるのは、社会保険の加入対象の拡大、在職老齢年金制度の見直し、厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引き上げです。
その他、遺族年金の見直し、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入年齢の引き上げに加え、将来の基礎年金の給付水準の底上げなどがあります。

社会保険の加入対象の拡大

社会保険制度の適用拡大は、短時間労働者や個人事業所の加入を促進し、老後の保障や働けない時や出産時の生活の保障など、より多くの労働者が社会保険制度の恩恵を受けられるようにすることを目的としています。
現行制度において、加入の対象となるのは、適用事業所に使用される正社員及び従業員51人以上の企業などの労働者で、4つの条件(1.残業を除く週の勤務が20時間以上、2.残業代、通勤手当などを除く給与が月額8万8000円以上(年収106万円以上)、3.2ヵ月を超えて働く予定がある、4.学生ではない)のすべてに当てはまる場合です。
今回の改正では、企業規模要件について、10年をかけて段階的に縮小・撤廃する方針です(図表1)。

さらに、2.の賃金要件を撤廃することにより、いわゆる「年収106万円の壁」を意識せずに、各人のライフスタイルに合わせて働き方を選択することが可能となることを目指します。
撤廃の時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1016円以上となることを見極めて判断する予定です。
また現行制度において、常時5人以上の従業員を使用する法定17業種の個人事業所は社会保険の加入義務がありますが、2029年10月以降は、常時5人以上の者を使用するすべての業種の事業所が適用の対象となります(図表2)。

なお、適用拡大に伴う就業調整を減らすため、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対して、事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減する3年間の時限的・特例的な措置を実施するとしています。
事業主の追加負担分については、国などが全額負担して支援する方針です。

在職老齢年金制度の見直し

急速に進む少子高齢化において、平均寿命・健康寿命が延びるなか、働き続けることを希望する高齢者が増加し、社会にとって重要な存在となっています。
人材確保・技能継承などの観点から、高齢者の活躍を後押しし、年金の減額を意識せずにより多く働ける仕組みを構築することが求められることから、制度の見直しが行われました。
在職老齢年金制度は、年金を受給しながら働く高齢者について、一定額以上の報酬がある場合は年金制度を支える側に回るという考え方に基づき、年金の支給額が調整される仕組みです。
現行制度においては、賃金と老齢厚生年金の合計が支給停止基準額である50万円を上回ると、老齢厚生年金について、超えた分の半額が支給停止となります。
今回の改正では、支給停止基準額を62万円(2024年度価格)に引き上げ、2026年4月より施行するとしています。
支給停止基準額は、賃金変動に応じて毎年度改定されるため、施行日においては、2026年度の賃金変動に応じて改定される予定です。
この見直しにより、新たに約20万人が、老齢厚生年金を全額受給できるようになると試算されています。

厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引き上げ

社会保険料や年金などの給付額は、標準報酬月額の仕組みに応じて決定されます。
標準報酬月額は、原則4月から6月の報酬額をもとに算出した報酬月額を区分化した上でその等級が決まります。
2025年4月現在、標準報酬月額は、厚生年金については8.8万円から65万円の32等級、健康保険は5.8万円から139万円までの50等級に区分されています。
厚生年金の標準報酬月額には、年金の給付額に大きな差が出ないようにするため、また企業と従業員で折半となる保険料について事業主の負担を考慮するために、上限が設けられています。
上限の設定は、全被保険者の平均標準報酬月額の約2倍の額とされていますが、年度末時点で現行の上限を超える状態が続くと認められた場合は、政令により最高等級の上に新しい等級を追加することができます。
一方、標準報酬月額の上限については、上限を超える収入がある場合、実際の賃金に占める保険料の割合が低くなり、収入に応じた年金を受け取ることができない状態となることが問題視されていました。
そこで、今回の改正では、賃金が上昇傾向にあることを踏まえて、世代内での公平を期するため、負担能力に応じた負担を求め、将来の給付を充実させるとして、標準報酬月額の上限を現行の65万円から段階的に75万円まで引き上げることになりました。
時期については、2027年9月から68万円、2028年9月からは71万円、2029年9月から75万円となっています(図表3)。

なお、将来の給付水準への影響は、在職老齢年金の見直しにおいては-0.2%、標準報酬月額の上限の引き上げでは+0.2%と試算されています。
保険料負担に応じた本来の年金額を受給しやすくし、厚生年金制度の財政を改善することで、厚生年金全体の給付水準が底上げされ、将来の給付水準は上昇すると考えらています。

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