20~30代の利用者が特に多い傾向に「退職代行」利用の現状と企業への影響
近年、「退職代行」が話題です。
退職代行とは、退職を希望する従業員の意思を本人に代わって会社に伝えたり、退職手続きをサポートしたりするサービスのこと。
従業員の突然の退職は業務に支障をきたします。
そこで、東京商工リサーチ調査から退職代行の現状を見ていきます。
大企業での利用が多い
退職は民法上、2週間前までにその意思を伝えれば退職できることになっています。
やむを得ない事情がある場合は、即日退職も可能です。
また、退職代行サービスの利用は労働者の自由であり、法律上の要件を満たしていれば企業は拒否することができません。
東京商工リサーチが6月に実施した「2025年企業の『退職代行』に関するアンケート調査」によると、2024年1月以降に「退職代行」業者を利用した従業員の退職があった企業の割合は、7.2%(6653社中481社)でした。
この内訳は、「正社員・非正規社員であった」が1.0%(同69社)、「正社員のみであった」が5.3%(同357社)、「非正規社員のみであった」が0.8%(同55社)となっています。
これを規模別で見ると、大企業が15.7%(489社中77社)で、中小企業が6.5%(6164社中404社)。
調査では、「大企業での利用の割合が多いのは、従業員の母数が多いこと、福利厚生や退職手続きが整備されていることなどから、退職による影響が小さく、退職代行でもしがらみなく退職できる心理などが働いている」と分析しています。
接客業での利用が目立つ
次に、年代別で見たところ(複数回答)、「20代」が60.8%(452社中275社)で最多。
次いで「30代」が26.9%(同122社)、「40代」が11.0%(同50社)、「50代」が6.4%(同29社)、「10代」が5.0%(同23社)、「60代以上」が2.8%(同13社)となっており、若い世代の方が退職代行の利用に対する心理的ハードルが低いことが見て取れます。
業種別では、「各種商品小売業」や「洗濯・理容・美容・浴場業」、「宿泊業」など消費者と直接対面するBtoC業界での利用が多い傾向にあるようです。
では、退職代行を利用した従業員の退職によって、企業はどのような影響を受けているのでしょうか。
同調査による業務に対する影響については図表の通りで、全企業において「退職者の業務をカバーするため、従業員の残業が発生した」が31.11%(376社中117社)で最も多くなっています。
また、全企業におけるその後の採用に与えた影響を見ると(複数回答)、「影響はない」が74.0%(431社中319社)で最多。
次いで、「応募者の転職回数や職歴をより厳格に見極めるようになった」が20.8%(同90社)、「応募者のリファレンスチェックをするようになった(より厳格化した)」が10.2%(同44社)、「適性検査(SPIなど)で退職代行を活用した退職者と同じ傾向の応募者の採用を厳格化した」が5.8%(同25社)と続き、採用時の確認を厳格化する傾向にあるようです。
