対応を怠った場合は罰則が科せられることも 熱中症対策義務化の概要と留意点
厚生労働省は4月15日に、企業に対して、職場における熱中症対策を罰則付きで義務付ける労働安全衛生規則の一部改正する省令を公布しました(施行期日:2025年6月1日)。夏本番を迎えるにあたり、ここではその概要についてまとめます。
義務化の背景
厚生労働省のデータによると、2023年の熱中症による死傷者数は1106人で、5年ぶりに1000人を超えました。
このうち死亡者数は31人で、直近10年で最も多くなっています(図表参照)。
熱中症は死亡災害にいたる割合が他の災害の約5~6倍に上ります。
死亡者の約7割は屋外作業であるため、気候変動の影響により今後更なる増加が懸念されています。
また、死亡被害のほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」にあることも問題視されています。
こうした背景を受け、厚生労働省は3月12日に「第175回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催。
近年の猛暑の影響による職場での熱中症のリスクの高まりに対して、労働安全衛生規則の一部を改正し、事業者に「早期発見のための体制整備」、「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」、「関係作業者への周知」などの職場における熱中症対策を罰則付きで義務付ける改正案を答申しました。
これが4月15日に改正省令として公布、6月1日より施行されます。
実施すべき対策
改正省令(安衛則612条の2)によれば、熱中症が生じる恐れのある対象作業を、気温や湿度などから算出する「暑さ指数(WBGT)」が28度以上または気温31度以上の作業場で行われる作業で継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの」とし、次の対策を講じなければならないことになりました。
1.熱中症を生じる恐れのある当該作業を行う際には
1)「熱中症の自覚症状がある労働者」、
2)「熱中症のおそれがある労働者を見つけた者」がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係労働者に対して周知すること。
2.熱中症を生じる恐れがある当該作業を行う際に、
1)作業からの離脱、
2)身体の冷却、
3)必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせる、
4)事業場における緊急連絡網・緊急搬送先の連絡先及び所在地等、熱中症の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を作業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること。
なお、罰則においては、前述の「報告体制の整備」、「実施手順の作成」、「関係者への周知」への対応を怠った場合、法人や代表者らに6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科すこととされています。
その他、熱中症対策義務化の対象作業に該当しない業務においても、作業強度や着衣の状況などによっては熱中症のリスクが高まるため、上記に準じた対応が望ましいとされます。
企業の安全配慮義務の一環として、必要な熱中症対策を講じられるように準備を進めなければなりません。
